2010年代に入ってから、オーガニックコットンというものを目にする機会が増えてきたと思います。主にTシャツやタオル、化粧用コットンなどで見かけられますね。天然もの志向や自然派志向の方から特に注目を集めていると思います。
しかしながら、あなたが思っているオーガニックコットンは正しいものではないかもしれません。今回は、まずオーガニックコットンについての説明から入りたいと思います。そして、綿の真実の立場から「オーガニックコットンの真実」を述べます。
オーガニックコットンとは?
農薬や化学肥料を3年間使用していない土壌で、殺虫剤や除草剤など農薬を使用しない有機栽培され、遺伝子組み換えされていない種子を使用して栽培された綿花(*1)のことを指します。
農薬や化学肥料を使用しない有機栽培をすることで土壌への負荷軽減や、生産する農民の農薬による健康被害を抑制することなどを重視した取り組みです。現在のオーガニックコットンの年間生産量は約150,000トン(2015年)で、これはオーガニックコットンでない通常の綿花を含めた全世界の年間総生産量の約1%未満の量です。
一方で、生産量の少なさや栽培コストの高さ、オーガニックの認証費用がかかることなどから価格は通常の綿花より1.5~2倍ほど高価になります。
(*1)綿花:畑に生えている綿のこと。植物。
オーガニックコットンとそうでない綿花の違いは?
一般的に綿花を栽培するには、他の農作物(トウモロコシ、大豆、小麦など)を栽培するよりも農家の手間がかかります。そのため、安定かつ効率的に綿花が収穫できるよう、農家は農薬や化学肥料を使用せざるを得ません。
農薬は、綿花や綿の実に付着する虫を駆除するための「殺虫剤」や、綿の実を開かせて綿繊維を効率的に収穫するために枝葉を人工的に枯れさせる「枯葉剤」などが使用されています。これら農薬や化学肥料を使用することにより、生産農民に健康被害がもたらされるとともに、地球環境に対し大きな負荷をかけていると懸念されることがしばしばあります。
しかしながら、このように農薬や化学肥料が使用された通常の綿花も、栽培段階における自浄作用による化学物質の分解や、収穫後の洗浄、あるいは製品製造時の加工段階を経ることで、消費者の手元に渡るころには残留農薬はほとんど検出されなくなります。よって、科学的分析ではオーガニックコットンと通常の綿花の間に違いはないと言われています。
このように、オーガニックコットンと通常の綿花との違いは、あくまで綿花の栽培段階に限定されており、分かりやすい違いは「農薬や遺伝子組み換え種子を使用していない」があるのみです。そのため、一部のオーガニックコットンを使用した商品に散見される「オーガニックコットンのほうが肌に優しい」や「手触りが良い」といったキャッチフレーズは、明確な科学的根拠に基づくものではありません。
一方で日本国内では綿花に限らず、食品などのオーガニック製品やJASマークに代表される有機栽培商品は、近年特に好意的な注目を受け、未来の地球環境に配慮した取り組みとして評価されている面もあります。
オーガニックコットンと通常の綿花はどうやって見分けるのか?
前述したように、オーガニックコットンと通常の綿花は見た目も成分もほとんど一緒のものです。まして加工され製品になると、どんな専門家でも違いが全く判別出来なくなってしまいます。
あなたが購入する最終製品にオーガニックコットンが使用されているかどうか判断するためには、農場での栽培時や工場で加工される工程など全ての流通・生産経路における監視(トレーサビリティ)が必要となります。そのため監視基準にはいくつか国際的な基準が存在します。オーガニックコットンの認証基準は主に農場と工場、二つの場面で分けられます。
農場ではGOTS(Global Organic Textile Standard)、工場ではGOTSとOCS(Organic Content Standard; Textile Exchangeという団体が管理)があります。
これらの認証資格は、オーガニック原料を広く世に知らしめることを目的とし、原料から最終製品までの生産経路の追跡(トレーサビリティ)の確保に焦点を当てています。日本国内で製造されたオーガニックコットン商品には大体この2つどちらかのマークが付けられています。これら2つのマークが付与されていないにも関わらず、オーガニックコットンを謳う商品は、まず信用してはいけません。
以上、ざっくばらんですがオーガニックコットンの概要について説明しました。次回は、これらの認証が果たして本当に効力を持っているのか?外国での実態はどうなっているのか?について述べます。