前に「綿はだれでも栽培できる」と述べましたが、こと商業栽培となるとそうはいきません。利益を出すためには何よりコストを抑える必要があります。そのため、少品種大量生産が必要となってきます。
少ない品種を効率的に大量に生産している国の代表格が、アメリカです。アメリカは大規模機械化農業により、徹底した品質管理と効率的な大量生産によって高価格の綿花を生産しています。同じような国はブラジルやオーストラリアが挙げられます。
綿花の商業栽培に最適な条件はいくつかあります。
最も重要な条件は、気候です。春過ぎの種まきから、コットンボールが成熟するまでの間は多く雨が降り、秋には昼夜の寒暖差があってボールが成熟し繊維が弾ける時期には雨や霜が降りないことが条件です。春から夏の雨は植物に栄養を与えるために必要な一方で、繊維が弾けてからの雨や霜は変色による品質の低下を招きます。秋に雨が多い日本で綿花の栽培が困難な理由の一つです。また、綿花の栽培が出来ない冬に気温が下がることで、害虫の死滅を促すことがあります。
また気候以外でも、関連産業施設が整っている地域であることも重要です。綿花栽培は畑だけがあればいいというわけではありません。収穫した綿花を、種子と繊維に切り離す作業を行う「繰り綿工場(ジン工場)」や大容量の倉庫、鉄道や港など輸送設備が整っていれば、より効率的に商業用の「綿」を生産することが出来ます。
これら「四季のある乾燥地帯」で「関連産業施設が整っている」ことが、綿花にとって最も好条件な立地と言えるでしょう。その代表格が、アメリカ最大の綿産地であるテキサス州とカリフォルニア州です。
世界最大の綿産国はインド、次いで中国です。しかし世界最大の綿花輸出国となるとアメリカになります。アメリカはその広大な土地と最先端の技術を生かし、綿花だけでなくトウモロコシや大豆、小麦などを大量に生産し、そして外国に輸出することで、世界最大の農業大国として君臨しています。
その影響力は強烈で、綿花の商用売買の際に用いられる相場価格(綿花相場)は、シカゴ商品取引所で決定されます。また、価格を決める際に参考になる品質のランクも、アメリカ農務省(USDA:United States Department of Agriculture)によって決定されています。その他、世界最大の種苗会社であるモンサント社(Monsanto)や、穀物売買のトップに立つ穀物メジャーの一角カーギル社(Cargill)もアメリカの会社です。