現在、綿花は世界77か国で商業栽培されています。また、120か国が綿花を商業利用しています。商業利用とは紡績・織布や服飾、その他繊維製品の製造を意味します。世界の綿花の生産量・消費量・輸入量・輸出量などは、アメリカ農務省(USDA)が毎月第2木曜日に発行しているレポートに詳細があります。これはどなたでも閲覧が可能です。
https://www.fas.usda.gov/data/cotton-world-markets-and-trade(アメリカ農務省の綿花レポート)
さて、一般のカレンダーは1月1日、日本の年度は4月1日から始まります。綿花業界にも同じように「綿花年度」というものが存在します。綿花年度は8月1日から始まり、7月31日が締め日です。北半球の収穫期が9~11月、南半球の収穫期が3~5月であることから、世界の一年の収穫量が図りやすいからと言われています。現在は2016/17年度です。
では、実際のところ世界で一番多く綿花を生産している国はどこなのか?最も多く綿花を消費している国はどこなのか?先のアメリカ農務省のレポートを参考に、見ていきたいと思います。これら世界中での綿花の需給情報は、直接綿花の相場に関係するものであり、売り手や買い手すべての綿花関係者が常に注目している指標です。下記の表は16/17年度のもので、確定数値ではなく需給予測です。先物商品として取引される綿花は、過去の数量よりも未来の予測の方が大事なのです。
国名 | 生産 | 輸出 | 消費 | 輸入 |
---|---|---|---|---|
インド | 27.00 | 4.20 | 23.75 | 1.80 |
中国 | 22.00 | 0.10 | 35.75 | 4.50 |
アメリカ | 16.96 | 12.00 | 3.30 | 0.01 |
パキスタン | 7.90 | 0.25 | 10.20 | 2.20 |
ブラジル | 6.50 | 2.90 | 3.20 | 0.10 |
オーストラリア | 4.50 | 4.00 | 0.04 | 0 |
ウズベキスタン | 3.70 | 2.15 | 1.50 | 0 |
トルコ | 3.20 | 0.32 | 6.75 | 3.70 |
トルクメニスタン | 1.43 | 0.85 | 0.68 | 0 |
ブルキナファソ | 1.30 | 1.15 | 0.02 | 0 |
バングラデシュ | 0.12 | 0 | 6.40 | 6.30 |
ベトナム | 0 | 0 | 4.90 | 4.50 |
インドネシア | 0.01 | 0.01 | 2.90 | 2.90 |
メキシコ | 0.65 | 0.1 | 1.85 | 1.28 |
韓国 | 0 | 0 | 1.15 | 1.15 |
タイ | 0.01 | 0 | 1.20 | 1.23 |
日本 | 0 | 0 | 0.30 | 0.30 |
(単位は100万俵 1俵あたり約480ポンド=220kg)
(綿花の俵「ベール」の写真)
世界最大の綿産国・インド
今年度、世界最大の綿産国はインドになると予想されています。ここ数年、それまで圧倒的量を生産していた中国を抜き、インドが世界最大量を生産しています。今年度の推定で、2,700万俵です。インドは、中国に並ぶ世界最大級の人口を活かし、綿花の生産だけでなく消費も世界トップクラスです。アメリカのような大規模農業ではなく、小規模な農家が寄せ集まっている形態です。労働賃金が安く、またこの国特有のカースト制度があるので、しばしば児童労働・強制労働の批判を受けることがあります。また、インドはオーガニックコットンの生産量も世界トップです。現在、オーガニックコットンの全世界の生産量の半数以上はインドからです。
世界全体での総生産量は、1億534万俵と想定されています。インド・中国・アメリカの3か国で世界全体の60%の綿花を生産しており、綿花業界でもこの3国のパワーは抜きんでています。
世界最大の綿輸出国・アメリカ
世界最大の綿産国のインドは、自国で消費する量も多いので、そこまで輸出量が多いわけではありません。輸出量が最も多いのは、農業大国アメリカです。徹底された大規模農業で最高の品質と収穫効率を誇るアメリカは、収穫した綿花の大半を外国へ輸出しています。自国の綿の質が良いので、わざわざ他国の綿花を輸入する必要もありません。今年度の世界全体の総輸出量は約35,000俵なので、3分の1はアメリカからの輸出が占めていることになります。
このように、世界各国に品質の良い綿花を輸出するアメリカの権限は絶大で、アメリカ農務省によって品質の元となる基準が策定されたり、売買の際に元となる綿花相場の商品取引所がシカゴに存在したりします。
世界最大の綿消費国・中国
綿花業界ビッグ3の一角・中国は、近年生産量こそ減らしていますが、消費量は世界トップで、変わらず「世界の工場」と呼ばれています。なんといってもその莫大な人口が中国の工業を支えています。その影響力は正負どちらにも発揮し、2011年に綿花相場の異常高騰がありましたが、これも中国による買い付け・消費の極端な行動が理由だとされています。生産量のほとんどを自国で消費しており、外国に輸出することはほとんどありません。一部、ウイグル地方などで採れる高級な超長繊維綿・新疆綿など特殊なものが輸出されるのみです。
世界最大の綿輸入国・バングラデシュ
バングラデシュは、最近になって経済発展が著しくなってきました。その要因ともいわれているのが、服を製造したりする繊維産業です。同じように、豊富で格安な労働人口を目当てに、繊維産業で経済成長を遂げている国は、東南アジアに多く見られます。ベトナム・インドネシアなどもそうです。
バングラデシュの繊維産業と言えば、2013年に発生し1,127人が犠牲になった「ラナ・プラザ崩壊事故」が有名です。それまで、東南アジアの繊維産業は、日本企業にとっても近場で格安で縫製できることもあり、国のキャパシティーを最大限に使って行われていました。それは急激な経済成長を起こすとともに、労働環境の劣悪化など様々な社会問題も引き起こしています。一方で、この事故を契機とし東南アジア各国で最低賃金の向上など見られ始めるようになりました。
一時期の劇的な経済発展と比べると、最近でこそ東南アジアの経済成長は鈍化しつつあるとも言われます。しかし、人口ボーナスによる豊富な労働者がいる限りは、むこう数年から十数年は、繊維産業はこの地域に頼ることとなるでしょう。その先は、機械化が進むか、もしくは最後の未開の地・アフリカに目が向けられるかだと思います。
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