日本の綿花輸入事情

 今から30年以上前、商社が花形産業と言われていた1970年代~80年代にかけて、日本は世界最大の綿花輸入国でした。その数量はおよそ300万俵~400万俵。現代の国別輸入数量と照らし合わせても、トップ5には入る数量です。日本では戦国時代後期から明治初期にかけて国内で綿花栽培が行われていましたが、昭和のこの頃には綿花の国内自給率は0%でした。よって、綿糸や綿布の生産のためには原綿を大量に輸入する必要があったのです。

 日本の綿花輸入状況については、日本綿花協会のサイトに掲載されています。今回はその資料を基に、日本の綿花輸入状況について述べていきます。なお、この日本綿花協会の資料と共に、税関が公表している「財務省貿易統計」における「綿花・実綿」の輸入金額を確認したところ、概ね同じような割合になりましたので、双方ともに資料としては信頼がおけると考えられます。

現在の輸入量は最盛期の10分の1

(1971年以降の日本の綿花輸入状況の推移のグラフ:綿花年度)

 上のグラフを見てもらうと分かるように、1980年代後半までは300万俵から400万俵の間を推移していたものが、バブル崩壊頃を契機として急激に輸入量が減っています。

 それまでは原綿を海外から輸入し、国内で紡績・織布工程を行い、縫製および仕上げは再度海外に輸出して行うといった流れが主流でした。しかし1990年代以降、紡績から最終仕上げまでを安い労働賃金の海外で行うことでコストの抑制を図れることから、海外に拠点を作る企業が増えました。その結果、国内での繊維産業が大幅に減少していったものと考えられます。

 かつて、輸入した綿花の使用用途は糸や生地を作るための紡績用が主流でしたが、現在は不織布用など他の分野の割合が増えてきています。

輸入先はアメリカが最多

(過去2年間の国別綿花輸入量のグラフ)

  日本綿花協会のサイトによると2015年の綿花の輸入量は289,388俵、2016年は274,338俵とされています。貨物船に積まれている大きいコンテナ(40フィートコンテナ)には、大体85~90俵程度が詰めますので、およそ3,000本近いコンテナが1年間に日本にやってきていることになります。このうち、40%に当たる12万俵がアメリカからの輸入となっています。アメリカ以外で目立つのはオーストラリア、ギリシャ、ブラジルです。

 アメリカ、オーストラリア、ブラジルは広大な農地を活かした大規模機械化農業が有名であり、品質や価格も安定しているため輸出量も多いです。世界全体で見るとそこまで多くありませんが、ギリシャはヨーロッパ最大の綿花生産国です。アメリカやブラジル同様、政府による助成金が支給され、品質の高い綿花を生産しています。

綿花の購入方法

 紡績会社など綿花を使用したいものが綿花を輸入する際は、外国の農家から直接買うことはありません。ほとんどの場合、商社を通じて購入します。かつては伊藤忠や丸紅など、総合商社にも綿花担当部門がありましたが、現在は小規模な綿花専門商社を介する方法が主流です。その中で最も大きいとされるのは、豊島と東洋綿花でしょう。

 商社を介して綿花を購入する方法は、諸外国の繊維産業とは異なり、日本独自の取引形態といえます。商社を利用する理由として、商社の情報ネットワークや輸入時の手続きの簡素化・コストダウン、品質選別能力や商社の信用力などが魅力的だからです。一方、諸外国では紡績企業などのメーカーが、輸出元の商社(穀物メジャーなど)と直接取引をする方法が通常です。




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